調剤薬局とドラックストアは、薬剤師の勤務先として一般的です。薬の専門知識を活かして社会に貢献できる職場ですが、今、薬剤師にとって魅力的なのはどちらなのでしょうか。私は15年以上、調剤薬局で勤務しておりますが、年々、薬剤師として求められるハードルが高くなっているのを実感しています。
調剤薬局に勤務する薬剤師の主な仕事は、処方箋調剤です。しかし、近年では処方箋調剤のみならず、域連携薬局や、専門医療機関連携薬局、かかりつけ薬剤師などが盛んに叫ばれています。
このかかりつけ薬剤師は、調剤薬局に勤務する上では避けられないものです。すでに大手の調剤薬局チェーンでは、かかりつけ薬剤師として患者を持つことが進められています。大手の調剤薬局に勤務している私の友人は、かかりつけ患者のノルマをこなすことにヘトヘトになっています。それはただ、書面にて「かかりつけ薬剤師」の同意書にサインしてもらうだけではなく、一人の患者に対して、その人の使用している全ての薬剤に対して責任を持ち、把握して管理することです。薬剤の一元管理の意味は深く、患者の生活背景や、受診状況、服薬状況や家族構成までも考え、処方設計の提案や、残薬調整、服薬のサポートも行うことが求められています。この制度は、今まであまり患者に深く関わらなかった薬剤師にとってかなりハードルが高いものです。
ドラッグストアでは、一般医薬品をはじめとした生活品を販売します。ドラッグストアで取り扱う医薬品はそのリスクごとに要指導医薬品、第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品などに分類されます。薬剤師しか販売できないものもあり、専門的な薬の知識とコミュニケーション能力、セルフメディケーションの正しい知識なども求められます。
現在では、スイッチOTCも多くなり、繊細な配慮が必要となります。例えば、口唇ヘルペスの薬剤はドラッグストアで購入することができますが、例え患者が買いに来たとしても、過去に医療機関で診断・治療を受けた人にしか販売できません。間違ってステロイドを販売してしまうと、悪化させてしまうことにもなりかねません。
私の知人はドラッグストアで働いた経験がありますが、しっかりアレルギー歴を確認せずに風邪薬を販売してしまったことで、後に患者が救急車で搬送されたというエピソードを持っています。
このような観点からも、これからは正しい健康と薬の知識が一般的にも必要となり、その普及において薬剤師は重要な役割を請け負うことになります。
近年、リモートワークが盛んになり、医療の現場でもそれらの影響を受けています。遠隔でも診察が行えるオンライン診療とともに、オンライン服薬指導でも患者の移動の軽減や待ち時間の削減などに貢献できる可能性がひろがりつつあります。
しかし、実際のところ、オンライン服薬指導もまだまだ全国的に普及しているとは言い難い状況です。私の勤務する調剤薬局でも、オンラインに使用するカメラや通信機器の設置すら出来ていません。それは、設置費用が高くかかること、対応できる十分な薬剤師の確保が困難なこと、オンライン服薬指導を行った場合の薬剤の配送方法などのたくさんの課題が解決できていないからです。これらの問題を一つ一つクリアしながら、地域に合ったオンライン医療を構築していかなければなりません。
一方、ドラッグストアではOTC薬を上手に使う方法を教え、早い段階から病気や健康への予防や対策を行い、生活習慣病の予防や健康維持に貢献する存在になることが大切です。
今後、薬剤師は医療従事者としての役割を担う必要があります。
ドラッグストアでは、一般薬の幅広い知識とともに、介護や生活用品も含めセルフメディケーションを取り入れた適切な指導で健康に貢献することができます。
調剤薬局では、かかりつけ薬剤師や、在宅、オンライン服薬指導を通じて、今まで以上に深く患者と関わり、医療チームの一員として活躍の範囲が広がりそうです。
薬剤師として自分の得意分野を見極め、どちらに勤務したほうが患者のために役に立てるかをもう一度じっくり考えてみてください。自分が薬剤師として頼りにされ、日々やりがいを感じて力を発揮できる場所が一番魅力的なはずです。